【台風情報が早い】米軍発表の進路予想図(JTWC)の見方

米軍発表のJTWCでは台風情報をいち早く手に入れることができます。いわゆる台風のたまごをいち早く察知してホームページ上で公開してくれます。この情報の早さは、例えばこんな時に役に立ちます。

  • 事前に台風情報を手に入れることで、仕事の段取りや段取り変更をいち早く行うことができます。雨や強風ではできない仕事を受け持っている現場責任者や職人にとっての死活問題を解決します。
  • 外でのレジャーの予定を立てる時に役に立ちます。予定の変更や中止の連絡は面倒なので、早めに知ってくことで面倒事を回避できます。
  • とりあえず天気の話をしておけばOKみたいな風潮がありますので、何気ない会話の入り口として使用できます。

JTWCでは台風に関する様々な情報を手に入れることができます。外での仕事や川や海付近での仕事、レジャーなどの予定を立てる時に活用してみてはいかがでしょうか。

目次

JTWCとは?

JTWCとは、米国海軍の公式ウェブサイト(Joint Typhoon Warning Center (JTWC))が発表している台風情報のことを言います。検索ウィンドウで「jtwc」もしくは「ジョイントタイフーン」と検索すれば、おそらく一番上に表示されるでしょう。

米軍のサイトなので文字はもちろん全て英語で書かれています。そのため、この記事ではどういう手順で台風情報を手に入れることができるのかJTWCの見方を図解しています。

一応裏技としては、GoogleChromeのブラウザであれば「日本語に翻訳」の機能がありますので、大体の意味は分かります。画面上で右クリックしてから日本語訳に翻訳をクリックすることでできますので、参考までに言っておきます。

googlechromeの日本語に翻訳機能

もし、細かい話とかいいから進路だけ知りたいという方は、記事下部の台風情報の見方に進んでください。

予備知識

JTWCのホームページを開いてからパッと目につく用語を簡単に説明しておきます。

ABIO、ABPW、CPHCとは?

衛星画像の上の方に大きな青文字で「ABIO」「ABPW」が書かれています。そしてその右隣りに「please refer to CPHC」とその下にURLが書かれています。

「ABIO」「ABPW」の意味は、

  • ABPW(Abbreviated Pacific West)⇒西部北太平洋の略称
  • ABIO(Abbreviated Indian Ocean)⇒インド洋の略称

つまりこれらは、エリアの名称を表しています。

そして次に「please refer to CPHC」ですが、

  • CPHC(Central Paciffic Hurricane Center )⇒中部太平洋ハリケーンセンター

つまり、これより右側地域の情報が知りたければCPHCのURLにアクセスしてくださいということですね。日本での台風情報を知りたいのであれば特に気にしなくていい情報です。

LOW、MEDIUM、HIGH、SUB TROPICAL、Tropical Cycloneとは?

画面下の方に丸で囲われたLOW、MEDIUM、HIGH、SUB TROPICALの文字と、矢印マークと一緒にTropical Cycloneと書かれています。


LOW
TC development unlikely within 24 hours.24時間以内に熱帯低気圧に発達する可能性は低いが、警戒する必要があるエリアを表します。

MIDIUM
TC development likely. but expected to occur beyond 24 hours.24時間以上経過後に熱帯低気圧に発達する可能性があるエリアを表します。

HIGH
TC development likely within 24 hours.(Reference TCFA)24時間以内に熱帯低気圧に発達する可能性が高いエリア、もしくは既に発達しているが警戒基準が満たされていないエリアを表します。
HIGHに指定された全てのエリアは、熱帯低気圧発生警報(TCFA)が発令します。



SUB TROPICAL
Monitoring for potential transition to TC. invest label color denotes tropical transition probability.「熱帯低気圧の変化の可能性を観測しています。ラベルの色の違いで今後変化する確率を示唆しています。」といった意味で、つまりこれはただの説明書きです。

矢印マーク
Tropical Cyclone熱帯低気圧、台風の位置を表します。
TCFAとは?

TCFA(Tropical Cyclone Formation Alert):熱帯低気圧発生警報

24時間以内に熱帯低気圧警報の対象となる可能性が高いエリアを表します。

では実際にどのような流れで表示されるか見ていきましょう。

STEP1

このように熱帯低気圧に発達する可能性があるエリアに丸印が表示されます。

STEP2

しばらく経過後に実際に熱帯低気圧に発達しました。

時差について

次に衛星画像の真ん中下の方に「ISSUE TIME:30/1800Z」と表示されています。

まず「ISSUE TIME」とは「発行時間」を指します。つまり、いつ発行されたものかということを示しており、最新の衛星画像ということでもあります。

次の「30/1800Z」は、30日の18時00分という日付を表しています。そして「Z」についてですが「Zulu time」の略字で「協定世界時」のことを指します。

つまり「ISSUE TIME:30/1800Z」は、「30日18時00分(協定世界時)に発行された情報」というわけです。ところが、ここから日本標準時に換算する必要があります。

協定世界時は、「Z」や「Zulu time」以外に「UTC」でも表すことができます。日本標準時は「JST」と表します。

協定世界時と日本標準時の時差は9時間です。日本は日出る国と呼ばれるように他の国と比べて日が登るのが早いです。言い換えると、時刻が早い国ということですね。ですから協定世界時を9時間早くすることで、日本標準時に換算することができます。

つまり、協定世界時「30/1800Z」を日本標準時に換算すると「31日の3時」(※31日がない月であれば1日の3時)となります。

日付が変わって計算がわかりにくく感じるかもしれませんが、アナログ時計を思い浮かべて9時間進めることをイメージするとわかりやすいかもしれません。




9時間後

台風情報がないときの画面

熱帯低気圧や台風がないときは、以下のような画面で表示されます。

台風が無い時の衛星画像には、「NO SUSPECT AREAS」と表示されています。これは直訳すると「疑わしい領域ではありません」となります。つまり「しばらくの間はこの地域に台風が発生する兆候がありません」ということですね。

そして右側の文字欄には「No Active Tropical Warning in the Northwest Pacific, North Indian Ocean, Central Pacific, Eastern Pacific, or Southern Pacific Hemisphere.」と表示されます。つまり日本語で「北西太平洋、北インド洋、中央太平洋、東太平洋、南半球に台風情報はありません。」ということです。

どちらも文頭に「NO」がついているので一目見ただけでもわかりやすいですね。

台風情報がある時の画面

台風の階級

日本での台風の階級は、気象庁ホームページでは以下のように区分されています。

階級最大風速備考
TS
(Tropical Storm)
およそ17m/s(34ノット)以上
25m/s(48ノット)未満
海上強風警報に相当
STS
(Severe Tropical Storm)
25m/s(48ノット)以上
33m/s(64ノット)未満
海上暴風警報に相当
TまたはTY
(Typhoon)
33m/s(64ノット)以上海上台風警報に相当
気象庁 気圧配置 台風に関する用語より引用

一方、JTWCでの台風の階級は少しややこしいです。北太平洋の地域は以下の表のように区分されますが、インド洋と南太平洋の地域では推定強度に関係なく熱帯低気圧の区分はしていません。

従って、日本近海は北太平洋に該当しますので以下の表を参照してください。

このように日本とJTWCには違いがありますので注意してください。

参考画像階級と推定風速
TC(Tropical cyclone)
⇒熱帯低気圧や台風などの低気圧の総称として使用されています。
TD(Tropical Depression)
⇒熱帯低気圧
推定風速
⇒34ノット未満
TS(Tropical Storm)
⇒熱帯暴風雨
推定風速
⇒34~63ノット
TY(Typhoon)
⇒台風
推定風速
⇒64~129ノット
STY(Super Typhoon)
⇒大型台風
推定風速
⇒130ノット以上

台風の強さ

台風の階級は風速によって決まりますが、風速の計算方法や表示単位も日本とJTWCで少しだけ違いがあります。日本では10分間の平均最大風速から算出して「m/s」を使用します。一方でJTWCでは1分間の平均最大風速から算出して「knot」を使用します。

ノットは、「knot(knots)」「kt(kts)」と表すことができます。

1ノットは、1時間に1852m進む速さを言います。秒に換算すると3600秒に1852m進むということです。つまり「m/s」に換算するには、1852mを3600秒で割ればいいので、1852m/3600s=0.51444.....m/sと計算できます。

1knot=約0.514m/s

もし20knotsであれば、20×0.514=10.28m/sと計算するだけです。

参考までにいくつか例を上げると、

  • 20 knots ⇒ 約 10.28 m/s
  • 30 knots ⇒ 約 15.42 m/s
  • 40 knots ⇒ 約 20.56 m/s
  • 50 knots ⇒ 約 25.70 m/s
  • 60 knots ⇒ 約 30.84 m/s

と換算することができます。

もし細かい計算が必要ないのであれば、ノットを0.5倍で覚えてしまえば楽に暗算することができます。

台風情報の見方

熱帯低気圧や台風が存在していると以下のような衛星画像が表示されます。日本近海に「TS 09W "MEARI"」が発生していることが分かりますね。

日本近海に熱帯低気圧もしくは台風を確認したら、次に見るべき場所は「Current Northwest Pacific/North Indian Ocean* Tropical Systems」(現在の北西太平洋/北インド洋*熱帯システム)」です。

そして次に、日本近海にある「TS 09W "MEARI"」の情報を示す「Tropical Storm 09W (Meari) Warning #08 issued at 13/0300Z」の欄から「TC Warning Graphic」を選択します。

この「#8」とは更新回数のことを指し、発生してから8回目の情報ということになります。

「TC Warning Graphic」を選択すると、以下の画像が表示されます。

これで最新の台風情報を手に入れることができます。

東京付近では「13/12Z, 40KTS」と表示されていますね。協定世界時で「13/12Z」は、日本標準時で「13日21時」となります。なお時差についての解説は、前述した「時差について」を参照してください。

また、「KTS」とはノットと読み、風の強さのことを指します。この場合は「40KTS」なので、「約 20.56 m/s」と換算することができます。なおKTSの解説は、前述した「台風の強さ」を参照してください。

「TS 09W "MEARI"」の解説

「TS 09W "MEARI"」には、「TS」「09」「W」「MEARI」の4つの情報が入っています。

  • TS」⇒Tropical Stormのことを指します。台風の階級で説明したように、大きさによって「TD・TS・TY・STY」のいずれかになります。
  • 09」⇒1月1日以降、9個目に発生した台風のことを指します。いわゆる台風9号ということです。日本とJTWCでは台風の認定基準に差異があり、必ずしも番号が一致するわけではありませんので注意が必要です。
  • W」⇒Western Pacificのことを指します。つまり西太平洋の情報ということを示しています。この英単語のことをsubregion codeと言い「A、B、C、E、J、P、S、W」の8つの地域を区別しています。
    • 「A」⇒Arabian Sea(アラビア海)
    • 「B」⇒Bay of Bengal(ベンガル湾)
    • 「C」⇒Central Pacific(中央太平洋)
    • 「E」⇒Eastern Pacific(東太平洋)
    • 「L」⇒Atlantic(大西洋)
    • 「P」⇒South Pacific(南太平洋)
    • 「S」⇒South IO(南インド洋)
    • 「W」⇒Western Pacific(西太平洋)
  • MEARI」⇒台風の名称です。台風の名称は事前に140個決まっており、発生する度に順番に名付けられていきます。繰り返し使用されるため1度使用された名称も数年後にはまた使用されます。

以下の記事ではTC Warning Graphicを詳しく解説しています。予想進路以外の情報を入手したければご覧ください。

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