ハムサとは中東圏や北アフリカで代表的なお守りである。手の中央には目玉が一つ、そして中指を中心に左右対称の形をしているのが一般的な特徴だ。他にも、手の中央に目玉の無いものや上下が逆になっているものなど様々な形が存在する。
材質は、金や銀ならびに黒曜石で作られることが多く、キーホルダーやアクセサリーなどの宝飾品から壁掛けに至るまで様々なものが流通している。
なおハムサには他の呼び方も存在しており、ファティマの手、ファーティマ、ファトマの手など多数の表記揺れがある。これは、唯一神アッラーから啓示を受けた預言者ムハンマドの四女ファティマが由来とされており、イスラム圏においてファティマは理想の女性の象徴とされている。
🪬 | ハムサ(hamsa、khamsa) |
(アラビア語:خمسة) |
ハムサの歴史は長く、邪視から身を守るためのお守りというのが通説だ。他には、健康な妊娠を願ったり授乳能力の向上を願うなど主に女性のためのお守りとする考え方もある。また、邪視や女性など関係なく幸運のお守りとする考え方もある。
なお邪視とは「悪意を持って睨みつけることで相手に呪いを掛ける魔力」のことだ。嫉妬よりもさらに悪意に満ちた負の感情といったところだろう。
ハムサは邪視から身を守ると信じられているが、それはハムサの手は神の手と考えられており、神の手の加護により邪視から身を守るという考え方があるからだ。もちろんこれには諸説あるため、それぞれの指でイシス、オシリス、ホルスなど古代エジプト神を表しているという考え方もある。ハムサの歴史は長いので、各地で様々な逸話が言い伝えられてきたということだ。
ハムサはアラビア語で5を意味し、ハムサが5本指であることも含め、イスラム教の五行と関連付けられるようになった。五行とは信仰告白・礼拝・喜捨・断食・巡礼の5つの義務のこと言い、イスラム教の六信五行の信条に由来する。なお六信とは神・天使・啓典・預言者・来世・定命の6つを信仰することである。
ところで、ハムサは中東圏や北アフリカで代表的な邪視除けのお守りであると前述したが、トルコを始めヨーロッパ圏にも邪視除けのお守りとして広く親しまれているものがある。その名をナザール・ボンジュウと言い、ハムサとは似て非なる姿形をしているのだ。詳しくは以下のリンク先から参照されたい。