【貴重品を守る】耐火金庫と耐火バッグの選び方

目次

家庭用金庫と業務用金庫の違い

金庫には家庭用金庫と業務用金庫がありますが、この2つに明確な違いはありません。しいて挙げるとすれば、家庭用金庫はサイズが少し小さめで比較的シンプルな作りになっていることが多く、一方で業務用金庫は扉が複数あるものや内部に仕切りがあり、保管したい物の種類ごとに整理して置くことができるものが多くあるといったところでしょうか。

いずれにせよ数百kgもある大型金庫から数kg程度の小型金庫までピンからキリまであるのが現状ですので、家庭用金庫あるいは業務用金庫の違いよりも、何をどれくらいの量だけ保管したいのかによって選ぶ金庫のサイズは人それぞれになります。

金庫にはどんな性能があるの?

金庫にどれくらいの性能を求めるか判断に迷う方がいるかも知れませんが、金庫とは重要な物を保管するための物であり、火事や地震など外的要因で財産を失う可能性があることを考えると、性能は高ければ高いほど良いということがわかっていただけるかと思います。

性能といっても、金庫には火への耐性を表す耐火性能と、破壊によりこじ開けられることを防ぐ耐破壊性能に分かれますので、火事で中身が燃える心配があるなら耐火性能を重視するべきですし、空き巣に金庫を破られたり金庫ごと盗まれる心配があるなら耐破壊性能を重視するべきとなります。

というわけなので金庫を購入する前に金庫にはどのような性能があるのかを見ていきましょう。

耐火性能と耐破壊性能の試験はどんな試験?

金庫には耐火性能と耐破壊性能があり、試験を行いこれらの性能を有する金庫と認められたものに性能表示マークを付けることができます。

金庫の性能表示マークには、JISで定められた試験基準を満たしたことを表示するマーク日セフ連(日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会)で定められた試験基準を満たしたことを表示するマークなどがあります。このように、試験基準は製造業者が個々に定めているわけでないので、ある程度の信憑性が確約されているため、金庫を性能で選ぶ際にはどの規格の試験基準を満たしたのかを確認すればいいということになります。

なお、海外製の金庫は国や機関によって試験方法が異なるのでそれぞれ別の性能表示マークが表示されるのでます。

JISの試験基準

JISの規格では、以下の3つの試験が行われます。

  • 標準加熱試験
  • 耐破壊性能
  • 急加熱衝撃落下併用性能

標準加熱試験(JIS規格)

JIS規格における標準加熱試験は、耐火性能を確認する試験です。標準加熱試験は、一般紙用フレキシブルコンピューターディスク用に分かれていますが、試験方法はいずれも金庫を炉内に入れJISが定める標準温度曲線に従って規定時間加熱していき、加熱終了後は炉内で自然冷却するというものです。

一般使用の合格基準は、庫内温度177℃以下で中に入れた新聞紙が判読できれば合格となり、一般紙用耐火性能試験合格品を名乗ることができます。

一方でフレキシブルコンピューターディスク用の合格基準は、庫内温度52℃以下かつ庫内湿度80%以下を維持できれば合格となり、フレキシブルコンピューターディスク用耐火性能試験合格品を名乗ることができます。このように電子機器類は熱に弱いため試験基準が厳しくなっています。

耐久時間はそれぞれ30分、1時間、2時間、3時間、4時間の5つのランクに区分され、耐久時間に応じた性能表示がなされます。なお、これらを表す性能表示マークは以下の通りです。

一般紙用耐火性能試験合格品
フレキシブルコンピューターディスク用
耐火性能試験合格品
電子機器類は熱に弱い

電子機器類を金庫に保管したい場合は、熱に強いフレキシブルコンピューターディスク用耐火性能を有する金庫を選ぼう!

耐破壊性能(JIS規格)

JIS規格における耐破壊性能は、工具などでのこじ開けに強いことを確認する試験です。

合格基準は、①施錠機構への攻撃、②扉のこじ開け・カンヌキへの攻撃をそれぞれ15分間耐えることができれば合格となり、耐破壊性能試験合格品を名乗ることができます。なお、この試験は耐火性能とは異なりランクの区分はありません。試験に合格した金庫には以下の性能表示マークが表示されます。

耐破壊性能試験合格品
耐破壊性能を有していても油断は禁物

家庭用金庫は比較的軽量であり金庫ごと持ち去られる可能性があるため、壁や床に固定するなどの対策が必要である!

急加熱衝撃落下併用性能(JIS規格)

JIS規格における急加熱衝撃落下併用性能は加熱と衝撃によっての強度を測る試験になります。要するに耐火性能および耐破壊性能の両方を確認する試験ということです。

合格基準は、急加熱した金庫を9.1mの高さから落下させ、更に再加熱した結果、①金庫の破壊が起こらないこと、②施錠できること、③中に入れた新聞紙が判別できることの3点を満たすことができれば合格となり、急加熱衝撃落下併用性能合格品を名乗ることができます。なお、試験に合格した金庫には以下の性能表示マークが表示されます。

急加熱・衝撃落下併用試験合格品

日セフ連の試験基準

日セフ連(日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会)の規格では、耐破壊性能に対しての2つの試験が行われます。

  • 耐溶断・耐工具(TRTL)試験
  • 耐工具(TL)防盗試験

耐溶断・耐工具(TRTL)防盗試験(日セフ連規格)

日セフ連規格による耐溶断・耐工具(TRTL)防盗試験は、ドリルやハンマーなどの工具による破壊行為とバーナーによるガス溶断による耐久試験です。

試験方法は、①施錠装置への攻撃、②扉をこじ開ける試み及びカンヌキを開放する試み、③庫内に侵入口を開ける試みの3つの試験を規定時間行い耐えることができれば合格となり、耐溶断・耐工具(TRTL)防盗試験合格品を名乗ることができます。なお、試験に合格した金庫には以下の性能表示マークが表示されます。

耐溶断・耐工具(TRTL)防盗試験合格品

耐工具(TL)防盗試験(日セフ連規格)

日セフ連規格による耐工具(TL)防盗試験は、ドリルやハンマーなどの工具による破壊行為による耐久試験です。

試験方法は、①施錠装置への攻撃、②扉をこじ開ける試み及びカンヌキを開放する試み、③庫内に侵入口を開ける試みの3つの試験を規定時間行い、耐えることができれば合格となり、耐工具(TL)防盗試験合格品を名乗ることができます。なお、試験に合格した金庫には以下の性能表示マークが表示されます。

耐工具(TL)防盗試験合格品

耐火金庫には耐用年数がある

金庫には有効耐用年数が定められておりその年数は約20年とされています。というのも耐火金庫の製造に使用される耐火材に含まれる水分が、経年劣化により徐々に失われていくことで耐火性能が低下していくからです。というわけなので、耐火金庫は製造から20年を目安に買い替えましょう。

金庫の鍵のタイプ

金庫の鍵にはいくつかの種類があります。

  • キー式
  • テンキー式
  • ダイヤル式
  • マグネット式
  • 磁気カード式
  • 指紋認証式

それぞれ特徴がありますので見てきましょう。

キー式

キー式は鍵を差して回すだけのシンプルな構造のものです。キーの種類は、表面にギザギザの付いたピンシリンダーキーや小さな凹凸の付いたディンプルキー、円形状の形状をしているチューブラーキーなど様々な種類があります。

テンキー式

テンキー式は暗証番号を入力して解錠するものです。鍵を使用しなくて済むことが最大のメリットですが、金庫は日常生活では頻繁に解錠しない特性上、暗証番号を忘れてしまうことがよくあります。とはいえ、誕生日や電話番号、車のナンバーなどの推測しやすい番号は使用しないほうが身のためです。

ダイヤル式

ダイヤル式は、ダイヤルを回して解錠するものです。テンキー同様に鍵を使用しなくて済むことが最大のメリットとダイヤル番号を忘れやすいデメリットがあります。なお、ダイヤルだけで解錠できるものもありますが、ダイヤルを操作した後にキーを差し回して解錠するものもあります。

マグネット式

マグネット式は、特殊なマグネットを使用したマグネットキーと呼ばれるものを使用して解錠するものです。ピッキングによる解錠が非常に難しく、防犯性能が高いとされています。

磁気カード式

磁気カード式は、磁気カードを差し込む事で解錠するものです。複数枚所持していても、かさばらず保管がしやすいメリットがあります。

指紋認証式

指紋認証式は、自らの指紋を登録し、その指紋を鍵とし解錠するものです。登録した指を怪我していたり手荒れなどを引き起こしていると、指紋認証が反応しないことがあります。

金庫のサイズの目安

金庫をサイズで選ぶ目安としては、金庫の内寸法と保管したい貴重品類のサイズを確認しましょう。

以下の表はJIS規格で定められている紙のサイズですが、よくある貴重品のサイズがどの程度なのか参考までに確認しておきましょう。

規格サイズサイズの目安
B4257×364mm角形2号(240×332mm)
※A4用紙が折らずにそのまま入る最も一般的なサイズの封筒です。
A4210×297mm印鑑証明書(210×297mm)
契約書など(210×297mm)
B5182×257mm登記済権利書(182×257mm)
長形3号(120×235mm)
※A4用紙が三つ折りで入る最も一般的なサイズの封筒です。
A5148×210mm一般的な小切手(185×85mm)
B6128×182mm日本の紙幣(76×160mm〜76×150mm)
一般的な領収書(128×182mm)
A6105×148mmハガキ(100×148mm)
通帳(87×140mm)
B791×128mmパスポート(91×128mm)
A774×105mmポケットティッシュ(73×103mm)
B864×91mmカード類(54×86mm)

耐火バッグとは?

耐火金庫と類似したもので耐火バッグあるいは耐熱バッグと呼ばれるものが販売されています。しかしこれらの多くは海外製であるため、耐火性能が摂氏(℃)ではなく華氏(℉)で表示されていることが多いです。

摂氏から華氏への変換は、摂氏が0℃の場合は華氏は32℉となることを基本とし、10℃=50℉、100℃=212℉、1000℃=1832℉のように、摂氏が1℃上がるごとに華氏は1.8℉ずつ上がっていきます。

木造家屋の火事だと1200℃まで温度が上昇するのですが、これを華氏に変換すると2192℉になります。つまり2192℉を耐えることができる耐火バッグを購入すべきと言えます。

なお、これらは日本独自の耐火基準ではないので性能に一抹の不安があると思います。ですので、耐火金庫の中に耐火バッグを入れるなどの使い方をしてみてはいかがでしょうか。火事になれば耐火金庫とはいえ金庫内の温度は非常に高温になるため、それをバッグで保護することでより安全に貴重品を管理することができるのではないでしょうか。

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