各種成績を数値化し評価した指標を『セイバーメトリクス(Sabermetrics)』と言います。セイバーメトリクスは表面上の数値では図りきれない選手の能力を表すことができます。
例えば投手がどんなに良い投球をしても味方打線が得点しなければ勝ち星がつくことはありません。そんな不運が続き最終的に6勝8負の成績を収めたとしましょう。逆に、毎試合大量失点をしていても味方打線がそれ以上の大量得点を取れば、負け星が付くどころか勝ち星が付くこともあり、最終的に9勝6負の成績を収める運の良い投手がいたとしましょう。表面上の成績では後者の投手のほうが良い投手に見えますが、運の要素を省くと前者の投手のほうが良いチームに貢献していることもあるのです。
これは同様に打者にとっても当てはまり、どんなに良い当たりの打球でも守備選手の真正面に飛んだらアウトとなってしまう可能性が高いわけで、競技である以上打球の行方に偏りが生じます。年間を通せばある程度は収束していくものの、数多くの選手がいる競技においては偏りが収束せず本来の貢献度よりも過小評価されてしまう選手がいるのも事実です。
これを解消するために個々の成績を細かく数値化することで、本当に良い選手とは誰かを見極めることができる指標がセイバーメトリクスのメリットというわけです。
投手に用いられる指標
QS (Quality Start) | クオリティ・スタート |
HQS (High Quality Start) | ハイクオリティ・スタート |
ERA (Earned Run Average) | 防御率 |
WHIP (Walks plus Hits per Inning Pitched) | 投球回あたり与四球・被安打数合計 |
wFA (Fastball Runs Above Average) | 投手の投げるストレートによって、どれだけの失点を防げたのかを表す |
Chase Rate | ボールゾーンスイング率 |
QS(Quality Start)
【クオリティ・スタート】
先発投手が6イニング以上投球し、自責点を3点以内に抑えること。
HQS(High Quality Start)
【ハイクオリティ・スタート】
先発投手が7イニング以上投球し、自責点を2点以内に抑えること。
ERA(Earned Run Average)
【防御率】
投手が1試合(9イニング)当たりどれだけ自責点を与えたのかを平均した数値。
防御率=自責点×9÷投球回
WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)
【投球回あたり与四球・被安打数合計】
WHIPは投手としての評価の指標のひとつで、1投球回当たりどれだけの走者を出したかを表す。
WHIP=(与四球+被安打)÷投球回
なお、数値が小さくなるほど評価が高くなり、1.00未満なら球界を非常に良い投手とされ、1.40を上回ると非常に悪い投手と評価される。
wFA(Fastball Runs Above Average)
投手の投げるストレートによって、どれだけの失点を防げたのかを表す指標。ストライクカウントが多かったり、アウトを取ると数値は上がり、ボールカウントが多かったり、出塁や失点を許すと数値は下がる。ゆえに数値が高いほどストレートの速さや制球力に長けているといえる。
Chase Rate
【ボールゾーンスイング率】
投手におけるチェイスレートとは、ボール球をスイングさせる割合のことを言い、数値が高ければ高いほど制球力に長けていることになる。逆に打者にとっては、ボール球をスイングしてしまう率となるので数値が低ければ低いほど選球眼に長けているという指標となる。
打者に用いられる指標
BAもしくはAVR (Batting Average) | 打率 |
RISP (Runners In Scoring Position) | 得点圏打率 |
OBP (On-Base Percentage) | 出塁率 |
SLG (Slugging Percentage) | 長打率 |
ISOもしくはIsoP (Isolated Power) | 長打率-打率 |
OPS (On-Base Plus Slugging) | 打者としての評価の指標 |
BABIP (Batting Average on Balls In Play) | インプレー打率 |
wOBA (weighted On Base Average) | 打者の打撃力を表す指標 |
xwOBA (expected weighted On-base Average) | 打者の打撃力を表す指標 ※相手の守備力による影響を排除した指標 |
BAもしくはAVR(Batting Average)
【打率】
全打数中どれだけ安打を出したか割合で表した指標。(=安打する確率)
打率=安打数÷打数
RISP(Runners In Scoring Position)
【得点圏打率】
2塁または3塁、もしくはその両方に走者がいる場合の打率のこと。
OBP(On-Base Percentage)
【出塁率】
全打席中どれだけ塁に出たか割合で表した指標。安打・四球・死球の合計を打席数で割ったもの。
出塁率=(安打+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)
SLG(Slugging Percentage)
【長打率】
1打数あたりの塁打数の平均化した指標。
長打率=塁打÷打数
※塁打は「単打=1」「二塁打=2」「三塁打=3」「本塁打=4」で計算する。
ISOもしくはIsoP(Isolated Power)
【長打率-打率】
打者の長打力を割合で表した指標。なお、長打とは本塁打・三塁打・二塁打のことをいう。
ISO=(3×本塁打+2×三塁打+二塁打)÷打数
OPS(On-Base Plus Slugging)
【打者としての評価の指標】
OPSは出塁率と長打率を足したもので、数値が大きくなるほど評価が高くなり、0.9000以上であれば非常に良い打者として評価される。0.7300付近になると並の選手と評価され、0.5666以下では非常に悪いと評価される。
OPS=出塁率+長打率
BABIP(Batting Average on Balls In Play)
【インプレー打率】
本塁打を除いた打球のうち、どれだけ安打になったかを割合で表した指標。なお、ここでいう打球とはグラウンド内に飛んだ打球のことをいい、ファール打球はカウントされない。また、犠打も除外される。
BABIP=(安打–本塁打)÷(打数–三振−本塁打+犠飛)
wOBA(weighted On Base Average)
【打者の打撃力を表す指標】
wOBAは、打者がどれだけチームの得点に貢献したかを表す指標である。安打だけでなく、四球での出塁もプラス加点となる。
なお、評価基準は数値が高いほど評価が高くなり、0.400以上で優秀な選手と評価され、0.320で平均、 0.310以下では平均以下の選手と評価される。
xwOBA(expected weighted On-Base Average)
【打者の打撃力を表す指標】※相手の守備力による影響を排除した指標
xwOBAは、打者がどれだけチームの得点に貢献したかを表す指標であるが、wOBAとは異なり運の要素を取り除いた指標となる。
相手の守備力による影響を排除し、打球角度や打球速度、打者の走力などを考慮した指標であるため、打者の実力をより正確に反映できるとされている。
総合的な指標
WAR (Wins Above Replacement) | 選手としてのチームへの貢献度 |
WAR(Wins Above Replacement)
【選手としてのチームへの貢献度】
WARには『fWAR』と『rWAR』の2種類あります。fWARはFanGraphs社が運営するウェブサイト(https://www.fangraphs.com/)が公表しているWARの指標であり、rWARはSports Reference, LLC.が運営するウェブサイト(https://www.baseball-reference.com/)が公表しているWARの指標となります。これらは計算方法に違いがあるだけで、どちらが正しいだとかどちらがより正確だとか比較するものではありません。
どちらも数値が高いほど評価が高くなりますが、ポジションごとに計算の補正値が違いますので、必ずしも数値の高い選手のほうが素晴らしい選手とは言い切れません。あくまでも目安の一部としてお楽しみください。
評価基準としては、fWAR基準なら6.0以上、rWAR基準なら8.0以上であればMVP級の貢献度と評価され、どちらにおいても0未満であれば、代わりの利く選手として評価されます。